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第三十一話 変わらぬ距離

作者: 月歌
last update 最終更新日: 2025-03-11 11:00:00

◆◆◆◆◆

部屋に、静かな沈黙が落ちた。

紅茶の香りだけが微かに漂う空間で、遥は冷めたカップを見つめたまま思考を巡らせる。

コナリーの言葉を否定したのは自分だった。

それなのに、彼が自分から離れていくのではないかと、不安に駆られている。

(……何を考えてるんだ、俺。)

遥は内心で自分を叱咤した。

自分が答えを出したのに、コナリーの気持ちが遠のくことに怯えるなんて、都合が良すぎる。

けれど、さっきのコナリーの表情を思い出すと、胸の奥が冷たくなった。

(……なんで、そんな顔するんだよ。)

普段と変わらぬ穏やかな表情。

それなのに、その奥には何かを押し殺したような、冷えた影が見えた気がした。

遥が「俺より大事な人ができたら」と言ったとき、コナリーの瞳がわずかに揺れた。

けれど、彼はそれ以上何も言わず、ただ静かに頷いた。

それが、妙に引っかかった。

(なんか……このまま距離が開いていく気がする。)

無性に焦りを覚えた遥は、何か話題を変えようと口を開いた。

「なあ、ハリーと夏美に何かプレゼントを贈ろうと思うんだけど。」

不意に投げかけた言葉に、コナリーがわずかに眉を上げた。

「プレゼント、ですか?」

「ああ。婚約のお祝いにさ。」

遥は、努めて軽い調子を装いながら言った。

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